さとブログ

アラサー独身男。日々の学び。毎日更新。

【読書感想】個人書店が大好きな理由。本屋という社会の寛容について。島田潤一郎さん「あしたから出版社」

ただひたすらに本を読んでいる日がある。

 

時間ができるとすぐに本を読む癖はいつものことだが

何の予定もないたまの休日は、大概が本の時間になっている。
貧乏暇無しというがまさにそれだ。
暇な時間はすべて本に消えている。

 

部屋には未読の平積み本がたくさんあって
まるで本屋の一角のようだ。
まだ同じ本を2回買っていないところで
ギリギリ部屋の本棚と呼べる尊厳を保っている。

 

本が好きであることと同じくらい本屋に行くことも好きだ。
時間があると吸い寄せられるように本屋に入っては
毎回何かしらの一冊を買っている。
全く買うつもりがないのに、帰る頃には
なぜか本を手にしていて、毎度驚くばかりだ。

 

 

数年前までは本屋に行くと単行本を
5冊以上買っては10000円ほど使っていた。
冷静に今考えると、いくら知的消費といえ、適切だったのか定かではない。
結局読みきれなくて分量を減らすことになったが

 

駅中心街にある都市型の大型書店は
品ぞろえの豊富さ、平積みの美しさゆえ
とても素敵でいつまでもいられて楽しいが
私が本当に大好きなのは街の本屋さんだ。

 

 

先日、夏葉社という出版社の島田潤一郎さんの著書

「あしたから出版社」という本を読んだ。

この本は一人で出版社を立ち上げた

島田さんの職業人生奮闘記についての本で

島田さんは元々作家志望だったらしい。大学生になってから本をたくさん読み始め

文を書くようになり、作家を目指していたという。

 

島田さんの洞察力や、会話の端々から

素晴らしい言葉がたくさん散りばめられているこの本だが

私がとても気になってしまったのは次の部分だ。

 

「子どもがぶらっと入ってぶらっと出られる店って、コンビニと本屋しかない。」

 

これは真理だ。

夜になって、なんだか寂しい気持ちになって家にいるのも

ソワソワしてしまう日は誰にだってあると思う。

こんな夜を寛容に受け止めてくれる場所というのはあまりに少ない。

大人であれば、飲みに行けば忘れられるかもしれない。

それでも子どもにはその術が許されていない。

 

そんなときに受け止めてくれるのは、本屋ではなかっただろうか?

意味もなく、夜にTSUTAYAやゲオにいったりして

落ち着かない気持ちに折り合いをつけていた記憶がある。

空っぽの気持ちのまま受け止めてくれる場所はあまりにも少ない。

本当にコンビニと本屋しかないのかもしれないな、とふと感じた。

 

そういう意味でも、自分が子どもだったころに

近くにちょっと大人な人がやっている個人書店があったら…

なんて思ったりする。

 

不寛容な時代に、不寛容な夜にこそ

受け止めてくれる本屋の存在が大切で

きっと救われることだってあるだろうと思わずにはいられないのだ。

 

 

私にとって理想的な個人書店は

夫婦あるいは一人で経営しているようなところが一番いい。


彼らの本棚には人生がすべてが詰まっているから


収まっている本の背表紙からその人の趣味や
大切にしたいことや考えがにじみ出てくる。
関心のあることがそのまま本棚に現れている。

気になるジャンルの本が大量にあるお店にいくと

もしかしたらこの店主さんは自分と似ているのかもしれない。

なんて思ってひとりでドキドキしている。

ピュアな純恋愛みたいだ。


そんな店主の本棚に入っている読んだことのない本を読みたい。

そんな気持ちで、一期一会の出会いが嬉しすぎて

ついつい単行本を買いまくっていたのだ。

そういう意味での出費だったのなら決して悪いものでなかったような気もする。

 

 

悩みあぐねていたり、所在ない気持ちのときに誰かがそこにいてくれている実感は
大型書店では得られない。

 

私がしていることは選書の数珠つなぎだ。
誰かの紹介した本が新たな本への出会いを生んでいる。
テレフォンショッキングみたいな
読書で広がっていく足場が楽しい。 

少しずつ対話をする友だちを増やしていくような感覚。

 

これこそが大型書店にはない魅力だ。

 

自費出版の素敵な本に出会えたのも、ドキッとするような詩集に出会えたのも

ちくま文庫の滋味深さをしみじみ感じられたのも

きっとそのきっかけは個人書店が選定してくれたからだ。

自分だけでは大型書店で本の奥深くまで、潜ることはできなかった。

誰かとのつながりは本の世界においても大切なのだ。

 

だから私は、これからも個人書店を推していきたい。

書店という社会の寛容を大切にしたい。

 

そしたらまた。

 

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