さとブログ

アラサー独身男。日々の学び。毎日更新。

昨今の医療系養成校の乱立について思うこと。落ちぶれる国家資格。

放射線技師という仕事はコスパがいいと私は考えています。

これは時間外労働が少ないことと、その割には安定していることが挙げられます。

医療系の国家資格は全般的にこのような特徴があり、

比較的コスパがよい、あるいは生産性の高い職業です。

具体的には昨日のブログに書きました。

 

doppy-yan.hatenablog.com

 

 

ただ場所によっては、技師が買い叩かれている職場も多いと聞きます。

養成校時代の同級生にも手取りが15万円(フルタイム正職員で)の

放射線技師がいて私は驚愕しました。

 

 

 

1.国家資格のメリットは何か?

半永久的に食いっぱぐれない唯一性とその希少性です。

そのために報酬価値が損なわれにくいことだと私は考えています。

そのため、15万円で買い叩かれるようであれば

放射線技師という仕事に固執する意味はないだろうと心の中でふと思います。

 

15万円では今の日本では満足な暮らしができないでしょう。

仮にできたとしても貯蓄なり人生展望を考える限り

自転車操業的な要素を感じずにはいられません。

彼らは、もはや今までの徒労のために職業に縛られているように見えます。

認知バイアスの一つに、コンコルド効果(サンクコスト効果)というものがあります。

これは、投資の継続が損失の拡大になるとわかっていながら、

消費してきた苦労や金銭、時間を思うと、論理的な決断ができず、

投資を続けてしまうという心理現象を指します。

私は彼らに対して、このコンコルド効果を感じずにはいられません。

 

では、なぜこのように買い叩かれてしまう事案が発生するのか。

これは簡単な話で、供給量が多いことが問題なのです。

 

経済の用語で独占、寡占という言葉があります。

あるジャンルに対して、市場を支配している企業が少数であること

あるいは一つしかないことを指します。

独占、寡占市場において

商品やサービスの価値が低下することは基本的にありません。

 

価格競争が起こるよりは、ライバル各社の動きを慎重に眺めて

値段設定をするほうがずっと安泰で、

自らの利潤も業界全体の利益も維持できるからです。

つまり寡占独占市場であることは価値を提供する側には非常に有利に働き

価値を受け取る側には不利であり、割高な出費を生むことがあるのです。

 

 

ここで国家資格について考えてみます。

国家資格を取得するためには、養成校に通わねばなりません。

巷には 美容師や調理師などの専門学校は非常に多くあります。

その道を志す学生たちは、この学校を通い卒業が見込まれて初めて

資格試験を受ける権利を獲得するのです。

放射線技師も養成校に通わねば国家試験を受けられません。

三年制の専門学校や4大の養成校でその勉強をして

卒業が確定した時点で国家試験を受けられるのです。

 

親が子どもを思うときに安定した仕事についてほしいと思うのは

万人に共通するでしょう。

超高齢社会に突入して人口減少社会の到来や産業の衰退化

失われた20,30年を思うに、職業選択は非常に悩ましくあります。

 

この現状下で明らかに衰退しない産業というのは、需要が低下しない領域です。

社会における全般のサービス業は人口の減少に伴い

内需の低下により大きな打撃を受けることは避けられません。

そんな中でも衰退しない、あるいは衰退のカーブが比較的緩やかであるのか

医療サービスであると考えるのは非常に自然です。

 

2.私が大学進学の時点で決めた職業の選択基準

 

私が選んだ職業の判断基準は次の二つです。

  1. 公務員的な安定性
  2. 国家資格のある仕事

 

国家資格を選んだ理由は

仮に大学時代でも数多くある仕事を選べる気がしなかったという点から

やや乱暴に業種を固定してしまおうと思った部分がありました。

 

私のように、安定性と食いっぱぐれのない職種となると

医療の担い手になる選択をする学生は多くいるはずです。

親が医療関係者という場合も、親の後ろ姿や発言を受けて無意識のうちに

職業選択をしているのでこのような判断基準があることは明らかです。

 

このようにして医療系の職種に就職するべく、進学している学生が多くいます。

そして医療系養成校が非常に最近増えてきています。

放射線技師の場合も同様で、養成校が非常に増えてきています。

国立大学における放射線技師の募集定員は多い学校でも40名ですが

近年増えている放射線技師養成校では80名ほどの

募集定員を設けているマンモス校が非常に最近増えています。

 

最も全員が合格して放射線技師として卒業するわけではありません。

ですが、新設校から入学定員の半分が国家資格取得者として卒業したとしても

市場に与える影響は大きいことは間違いがありません。

 

3.放射線技師は就職難であるか?

 

これはどちらも正解だと私は考えます。その理由は以下の通りです。

 

「就職難である理由」

  • 放射線技師を本業として食っていくためには一定のハードルがある
  • 安定性を求めて病院を選ぶ場合、完全な買い手市場になる
  • 都市圏によっては養成校が乱立していて、入り込む隙間さえない

 

「就職難ではない理由」

  • 仕事自体はある(クリニックや検診施設など)。確かに食いっぱぐれない
  • 住む場所にさえこだわらなければ、売り手市場になるのは事実
  • 非常勤採用、パート採用はごまんとある

 

非常に酷な話ですが、都市圏の公的病院に正職員の座を求める場合

基本的には国立大学レベルの学力がない限り採用されることは難しい現状があります。

都市圏における放射線技師の高学歴化はやや異常で

旧帝国大学レベルの学生以外は採用しないという公立病院は非常に多いです。

 

また、寡占市場である放射線技師は

出身校のよしみが非常に大きい傾向にあります。

そのため、新設校出身では後ろ盾がなく、就職活動が厳しいのは紛れもない事実です。

専門養成校の場合、入学直後に教員の口から

都市圏で就職するのは諦めるようにと話をされると聞いたことがあります。

 

また、この専門養成校で影響を受けているのは、当事者である学生にとどまりません。

従来の四年大の大学生の就職活動も激化していて煽りを受けています。

退職者のセカンドキャリアとしての職業選択も

多すぎる学生たちに椅子を奪われ、再就職できないのです。

 

さらに放射線技師の数が増えるということは

経済でいう寡占市場の崩壊とも捉えられます。

つまり、技師全体の希少価値が損なわれていきます。

このために買いたたかれる放射線技師というのが出てくるのです。

高い給料を支払わなくても、空いたポストには就職口の溢れた学生が応募するため

人員は埋まるのです。

 

4.医療系養成校の乱立で得する人たちは誰か?

 

ではこの医療系養成校の乱立によってプラスに働くのは誰でしょうか?

それは、養成校の運営陣だけなのです。

入学前にはいい表情をしていながら、入学直後に希望を持った

学生の気持ちをどん底に落とすような発言をしている彼らなのです。

もっとも、私立である時点で利潤を追求するのは

当然のことで彼らを否定すべきではないかもしれません。

ただ、もし入学を検討するのであれば将来の不安を

うまく活用したビジネスモデルであるということは理解すべきです。

 

そして、彼らの利潤のために放射線技師全体の希少価値が凋落してしまうのです。

技師全体の価値が落ち、供給量が明らかに過剰であるなら

何のための国家資格なのでしょう?

年々増加するさまを見るに、誰のための養成校なのか、と憂慮せずにはいられません。

 

そしたらまた。