伊賀泰代さん「採用基準」を読んでみて。医療職のキャリア形成のために大切なものは何か?
私はもっと社会のことを知りたい。
経済や社会はどうやって回っているのか?というやまぬ好奇心は、学生時代に社会を見てこなかったことの裏返しで、これは医療従事者に共通して漂う世間知らず感なのではないかと思っている。
最近、伊賀泰代さんの著書「採用基準」を読みました。
東大法学部、経済学部の学生の話。
経済学部の学生が豊かな大学生活の中でいろいろなものに触れたり、優秀な人材と知り合う中で危機感を感じて経験と学びを重ねることで、卒業時には法学部の優秀な学生より魅力的な人材に変わっていくというコラムがありました。
医師や弁護士になりたいアメリカの大学生は大学院に通う必要があるため、専門の領域を勉強するまでの4年間、学士を取得し医療以外のことも深く勉強をします。
それに比べて日本の場合は、医師や看護師に関係なく、教養科目が一年目のカリキュラムにいくらかある程度で、大半が専門領域の勉強です。
私自身、異なる業種の友人と関わると、その知識の偏りに悲しくなる瞬間があります。医療職とは、あらゆる関心を医療の知識に振り切っている人が多いです。そして、この枠の中に閉じこもっている限り世間と大きく乖離した違和感に気づきません。
そもそも私は誤解していました。
この本に出会うまでは。
私の中でイメージしたキャリア形成とは、放射線技師の範囲内でした。行き着く先は昇進という一本道のみで枝分かれがありません。それもこれも缶詰で勉学に打ち込み、視野が狭くなり世間が見えなくなってしまったからなのでしょう。
そうではないのです。キャリアとは既存の商売道具に捕らわれるべきではなかったのです。
これでは結局、経済的に不自由しないために取得した資格によって不自由にさせられてしまいます。
自立的に生きていくための資格だったはずなのに、自由を阻むのもまたこの資格では本末転倒です。
ではこの商売道具に拘らずに生きるには何が必要か?
伊賀さんはそれがリーダーシップであるとこの本の中で述べています。リーダーシップを積み上げることで、あなたが踏み切れていない「本当にやりたいこと」に飛び込むことができるようになるのです。
私はこの本を通して気づいたのは、一度きりの人生で達成すべき最低ラインがご飯を食べていくことなら、多少気になる脇道があれば、急ハンドルを切ってでも選び取って進むほうがずっとワクワクするのではないか。
そして、自分で意識的にハンドルを切らない限りその小道に入り込むことはない。
進まなければ終わりのない平々凡々なロードサイドを走り続けることになる。
だからこそ、違和感を感じたそのタイミングでいつでも寄り道していいし、脇道の魅力が尽きたら来た道を戻ればいい。その幹線道路を進むも自由だということである。
そして、その寄り道と戻り道を支えてくれる勇気がリーダーシップというものだと、よくわかりました。
目からウロコの一冊でした。
やはり自分の価値観に大きな影響を与えてくれるのは、自分の周りにいないタイプの人の声なのです。
そしたらまた。